2017/09/08

lostdays 高鈴



京都出身の音楽ユニット「高鈴」が無期限の活動中止を発表した。
ヴォーカルのタカネがブログで活動休止に至る経緯と心境を綴っている。

→高鈴ブログ

今年5月、連休最後の日に京都RAGの周年記念のアヤヲと対バンのライブで観たのが
自分の中では(いまのところ)ヴォーカリスト・タカネの最後の姿になった。
バンドを解散して歌うことをやめていたアヤヲの、
すっかり元気になって歌うことの喜びをかみしめているようなステージの後、
周年イベントのトリをつとめる高鈴のライブになった。
一曲目の歌い出しから、声が出ていなくて音も外れていて、
これまで自分が知っていた一音一音を確かめるように丁寧に、伸びやかに歌うタカネとはまるで違う姿に
いたたまれなくて悲しくて帰りたくなっていたら、本人自ら演奏を止めた。
以前から喉の具合がよくないこと、ひどい花粉症で不調なことなどを説明し、
しばらく休憩したあと再開を試みたけれど、それでもやっぱりうまく歌えなくて
急遽、マイク、アンプを外して生声生音で歌うことに変更し、
今の状態で精一杯の歌声を聴かせてくれたけれど、
それはやっぱり自分が知っている高鈴のタカネの歌ではなかった。

歌がうまいヴォーカリストや売れている歌手や、歌うことが好きで歌っている人は世の中にいっぱいいるけれど、
自分の中では、高鈴タカネは「歌うべき人」として選ばれた人だと思っていた(アヤヲもそう)。
「嘆くギター」と出会ってから十数年、「愛してる」のMVに涙し、「ただひたすらに」に胸を打たれ
メジャーに行ったり独立したりの紆余曲折や、オーケストラや学生とともに演奏する姿をネット上で見つつ、
いつもいつも聴いているわけではないけれど、まる1日ずっと高鈴の曲を聴いていたいような日が
何ヶ月かに一度は必ずあって、ときおり宝物をいれた箱の蓋を開けるように聴いていた。

もう、生でその歌声を聴くことはできなくなってしまったけれど、
たぶんまた何ヶ月かに一度は無性に聴きたくなって、CDやネット上に残る高鈴の曲をずっと聴いていると思う。
また、ステージでその姿が見られる日が来ることを祈りながら。
素晴らしいヴォーカリストでした。


高鈴2013.03.29 @大阪MARTHA from TAKAGITO on Vimeo.


動画は2013年3月末、大阪MARTHAでのライブ。
前年に独立しアルバム「新世界」を発表し、「新しく生まれ変わった高鈴です」と言っていたころのもの。
iPhoneで最初から最後まで撮りっぱなしにしていた動画からの切り出し。
こんな日が来るとは夢にも思わず、まだ自分も無邪気に人を「愛してる」と思えていたり
単純に「ただひたすらに」人が好きでいられたころ。


2 件のコメント:

  1. はじめまして。素敵な文章を書かれますね。「ときおり宝物をいれた箱の蓋を開けるように」で泣いてしまいました。私は最近高鈴を知ったばかりで、毎日毎日聴いています。本当に選ばれた方だと思います。

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    1. コメントありがとうございます。
      すっかり書かなくなって、見る人もいないだろうと思っていたブログですが、
      こんなふうに古い記事が誰かの目に触れて何か感じていただけることもあるんだなあ、と
      あらためて思いました。
      もう新しい曲を歌うことはなくなった高鈴も同じく、かつて歌われた楽曲でも、
      新しく知って聴く人にとっては、胸に響くことには変わりないですもんね。
      しばらくぶりに今日は高鈴の曲を聴いてみます。ありがとうございました。

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