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モランディという画家を知ったのはその画家自身の絵画からではなく、おなじくイタリアの写真家ルイジ・ギッリが生涯の最後に情熱を傾けて撮影した「モランディのアトリエ」写真であり、その名と作品をはっきりと記憶するようになったのは、2013年に同じく県美で開催された彫刻家・小林且典さんの展示「薄白色の余韻」であった。
同展自体の図録はなかったのだが、追って取り寄せた小林氏が前年静岡市美術館で開催した展示「ひそやかな眼差し」の際に編纂された作品集「ひそやかな眼差し」の序文、美術評論家・岡田温司氏が『「気配」と「たたずまい」ー小林且典への手紙』のなかで、モランディと小林氏の共通性にふれ、その本質を「反復」、芸術の理念を「手仕事」ととらえ、「素材や技法との絶えざる格闘、そしてそのうちにこそ美が宿るという深い信念」と語る。そして「その美は、(中略)けっして奇を衒うというのではなくて、小さな差異、小さな変化を日々くりかえし積み重ねていくことのうちに、積極的な価値を見いだすこと。」であると言う。
「終わりなき変奏」というタイトルがつく今回の展示は、素描から油彩、エッチングまで100点あまりの作品が展示されていて、周知のとおりそのモチーフはありふれた壜や器だし、何年隔てても同じモチーフが繰り返し描かれているが、内覧に先立って行われた学芸員の方によるレクチャーによれば、「同じものを描いていてもそれはアレンジではなく、それぞれゼロからの表現を試みているのではないか」との考察があったが、一見すると「ブレない」(昨今意識高い系人間にとって最強のフレーズ且つ個人的にはあまり好きではない言葉)姿勢のように思えるモランディの絵画についても、語られるべきは対象物の同一性やそのような「ブレなさ」ではなくて、小さな変化や少しの差異に意識を砕き、変哲もない器を確かな存在感とたたずまいを感じさせる物体へと昇華させる絵画手法や「手仕事」的技法に基づいた、反復によって明らかになる「小さな変化」という美への探究心なのではないかと思う。
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展示会場、それぞれのセクション壁面にレタリングされている、寡黙であったというモランディの言葉が絵画作品とともに現実や日常への意識をあらためて考えさせる。
それは会場で確認していただくとして、ここでは前出の岡田氏の文からキルケゴールの言葉を孫引き。
「反復ーーこれこそが現実であり、生存の厳粛な事実なのだ」「人生は反復であり、反復こそが人生の美しさである」
ジョルジュ・モランディ展「終わりなき変奏」は2016年2月14日[日]まで。
兵庫県立美術館
休館日/月曜日(1月11日[月・祝]は開館、1月12日[火]休館)、年末年始(12月31日[木]、1月1日[金])
開館時間/午前10時~午後6時(金・土曜日は午後8時まで) 入場は閉館30分前まで
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